表彰状

 新年が明け、小学校や中学校では3学期が始まりました。子どもたちと教職員の皆さまにとって、今年が希望に満ちた一年となることを、心から願っています。

 この時期になると、いつも思い出す出来事があります。それは、私が小学校高学年の学級担任をしていた頃のことです。お正月には、学級の子どもたちからたくさんの年賀状が届きました。その一枚一枚に目を通していると、ひときわ心に残る一通がありました。その年賀状は上下2段に分かれていて、上段には子どもの新年のあいさつが、下段には保護者から次のような文が添えられていました。

───2学期の終業式の時、勝本先生が通知表とは別に、一人ひとりに『表彰状』を渡してくださり、感動いたしました。「お母さん、先生から表彰状をもらったよ!」と、我が子は家に帰るなり上機嫌で私に見せてくれました。我が子には『おだやかだったで賞』をいただき、夫婦そろってたいへん喜び合いました。ささいなことにくよくよせず、誰よりもゆっくりとしたマイペースな我が子ですが、そのことを褒めていただいたことに、心より感謝いたします。本当にありがとうございました。本年も何卒よろしくお願いいたします。

 私は常々、通知表だけでは子どもたちの“よさ”を十分に評価しきれないと感じていました。そこで、毎学期末には、通知表では伝えきれない子どもたち一人ひとりの特性や持ち味を、『表彰状』という形に託して励ますようにしていました。『笑顔で学級を明るくしたで賞』『人知れずに頑張っていたで賞』『友だちとなかよくしたで賞』など、子どもたちの姿に合わせてさまざまな賞を贈ったことが、今でも鮮やかに思い出されます。

 その年の2月、放課後に職員室で校務をしていると、ある先輩教員が新聞を手に、私のところへ駆け寄って来られました。
 「今、この新聞の『読者の声』の欄を読んでいたら、どうも勝本先生のことのような気がするんです。読んでみてください」
 紙面には『我が子に贈っていただいた表彰状』というタイトルで、先ほど紹介した保護者の名前とともに、あの年賀状とほぼ同じ内容が掲載されていました。すぐに保護者に電話をすると、「あのときの嬉しさが忘れられず、どうしても多くの方に伝えたくなって」と話してくださいました。その場におられた先生方や管理職の方々も一緒に喜んでくださり、子どもたちのために行ったことが、私自身にとっても大きな自信と励ましにつながる出来事となりました。

 当時、先輩教員から何度も教えられた言葉があります。
───『励ます』という字をよく見てごらん。“万”という字と“力”という字が入っているね。私は『励』という字には、“万の力”という意味があると思っているよ。つまり、子どもを励ますことは、子どもに“万の力”を与えることになると思っているんだ。子どもに秘められた可能性は無限にあると信じて、大いに励ますことが大事だよ。そうすると、子どもはその可能性を開花させて、すくすくと成長していくものだよ。そして不思議なことに、子どもを励ますことで、自分自身も励まされ、元気になるんだよ。

 この言葉は、その後の私の教員人生を支える大きな柱となりました。子どもの“よさ”を見つけ、それを言葉として伝えることが、どれほど大きな力になるのか――。そのことを実感した出来事が、まさにあの『おだやかだったで賞』でした。

 そんな出来事を思い出しながら迎えた新年。子どもの成長には、誰かからの励ましがどれほど力になるのかを思いながら過ごしていた折、ふと目に入ったのが、ひときわ赤く輝くナンテンの実でした。ナンテンは「難を転じる」という意味に通じ、新年に玄関や室内に飾られることが多い植物です。その赤い実を眺めながら、子どもたちが試練や困難を“転じ”、乗り越えていくためには、私たち大人が励ましの言葉を送り続けることが大切だと、あらためて思わずにはいられません。今年一年が、子どもにとって困難を乗り越え、大きく成長する年であることを、心から願っています。

 ~ 今年もたくましく伸びていけ!と、祈り、願う日 ~  (勝)

column_260109

皆さまの声をお聞かせください