ライフワークとライスワーク

 「校長先生、私は、仕事はもちろんお金儲けの為にするのだが、そのことだけでは面白くないと思います。仕事は、自分にとって、生涯をかけて追及するもの。つまり、仕事は、ライスワークではなく、ライフワークにしなければならないと思うのです。」これは、かつて校長を務めていた学校のPTA会長の言葉です。何気ない言葉ですが、職人さんならではの仕事観を感じました。

 好きで始めた仕事でも、“どうして、私はこの仕事をしているのだろう”と、一度は悩むものです。もちろん、仕事はその人にとって、向き不向きはあるものですが、このような悩みは、“仕事と人生が乖離”しているからではないでしょうか。つまり、仕事と生き方とが一致しないところに原因があると思います。

 では、一致させるにはどうすればいいか。一つは、“人は人間関係の中で成長する”という視点です。私はいつも、“仕事は、人生修行の場”であると思ってきました。1日の24時間の中で、仕事に費やすのは約8時間。1日の3分の1は職場。であるならば、その時間を、自分を鍛え、作り上げる時間でもあると捉えなければもったいないのではないでしょうか。

 人との応対の仕方、言葉使い、振る舞い方等々。全て“学び”であるわけです。教育現場に永く身を置いてきた私は、子ども、保護者、地域の方、そして、教職員との人間関係の中で、悩み、苦しみもしましたが、多くのことを学ばせていただいたと、今、つくづく思います。“人間関係は宝”との思いを強くしています。

 二つは、“職場の経営理念と自分の生き方を一致させる”という視点です。どんな企業でも理念や方針があります。その理念や方針を自分の生き方と繋げてみることです。一見、別次元のように思われた理念や方針と自分の生き方が、どこかでつながってきます。実は、一つ目の“人は人間関係の中で成長する”という捉え方ができれば、“職場の経営理念と自分の生き方は一致”してくるとの思いを強くしています。

 今、多くの企業・団体が「誰も置き去りにしない」の理念のもと、SDGsの運動に賛同しています。企業・団体が各々の理念や方針を越えて、方向性を同じにして、社会貢献への道を歩み始めました。誰も否定しようがない普遍的な次元を目指しています。職場の経営理念と自分の生き方が一致しやすい時代が到来したと感じます。

 「働き方改革」が叫ばれている現在ですが、ハード面である機構・制度とともに、この様なソフト面でも、“働く意味”を捉え直してみる必要があると思うのです。(勝)

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