12月になり、何かと忙しさを感じる今日このごろです。この時期、多くの小学校で2学期末の保護者懇談会が行われていることと思います。担任と保護者が直接言葉を交わす機会は、実はそれほど多くありません。私が担任をしていた頃は、学期末懇談会こそが子どもの良さを伝えるための絶好の機会と捉え、成績だけでなく日頃の様子が分かるような多くの資料を準備して臨んでいました。
子どもの成長には、「数値化できる」ものと「数値化できない」ものがあると常に感じていました。また、人は生涯を通して成長し続けるものであり、その時点の姿だけを近視眼的に評価するのではなく、未来に向かって可能性を開花させ続けるという視点を評価の前提にすべきだと痛感していました。そのため、数値化した評価に加え、その子が持っている可能性を如何に具体的に伝えるかを考えに考え抜いて懇談会に臨んだことが、今でも懐かしく思い出されます。
校長として務めた小学校の学期末懇談会の折、担任の奮闘ぶりや保護者の様子を感じ取るために、私は校舎内をひっそりと歩き、各教室で行われている懇談の雰囲気を見て回るようにしていました。明るく談笑している教室、真剣な表情で静かに語り合っている教室、子どもの作品を見ながら互いに微笑ましい表情を浮かべている教室など、さまざまな様子が窓越しに見受けられました。
ある年の2学期末の懇談会でのことです。校舎内をひと通り回った後、校長室へ戻ろうと廊下を歩いていると、懇談会を終えたばかりの保護者が目に留まりました。この保護者のお子さんは、さまざまな事情があって教室での学習は苦手でした。私はこの子の学級内での様子を担任から聞いていましたが、直接保護者の思いを伺いたいとずっと思っていました。そこで、思いきって声をかけてみました。
─── お母さん、今、懇談会を終えられたのですね。担任との話はどうでしたか?
─── 校長先生、とても有意義なものでした。おかげさまで、うちの子はこの学級で良かったと言っています。
─── それは何よりです。どんな点が良かったと言っていますか?
─── うちの子はとても気持ちが不安定で授業に集中するのが苦手なのですが、それでも、今の学級で勉強できることが嬉しいと言っています。毎日、この学級の友だちと過ごせることが楽しいと感じているようです。それは、担任の先生が、あたたかい眼差しでうちの子の良いところを見つけてくださっているからです。素晴らしい先生にめぐり合えて、うちの子は幸せです。
寒い廊下での立ち話でしたが、私の胸は熱くなり、深い感動を覚えました。そして、すべての子どもをあたたかい心で包み込んでくれる担任に対して、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
子どもたちは本来、「学びたい」「成長したい」と思っているのではないでしょうか。すべての子どもに、無限の可能性が秘められているのではないでしょうか。しかし、このことを観念論に終わらせないで、その可能性を“如何に開花させるか”という具体的で実践的な働きかけこそが、今、求められていると強く感じています。
イチョウの大木の葉が黄金色に輝いています。まるで、皆さんの今年の総仕上げを荘厳に飾っているかのようです。
~ “本年、本当にお疲れさまでした”との心境になる日 ~ (勝)